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2024.11.01
【経営】「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」を策定
経済産業省は、2020年11月に、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を促進するため、「デジタルガバナンス・コード」を策定しました。これは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表を経営者に求めるものです。
2022年9月には、デジタル人材の育成・確保などの時勢の変化に対応するため、「デジタルガバナンス・コード2.0」に改訂されました。
2024年6月には、検討会を立ち上げ、経営者がDXに取り組むことをさらに推進するため、「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~(案)」を取りまとめました。この改訂版では、企業価値向上に焦点を当て、経営者への伝わりやすさを重視した見直しが行われました。また、データ活用・連携、デジタル人材の育成・確保、サイバーセキュリティなどの時勢の変化に対応するための見直しも反映されています。
そして、先に実施したパブリックコメントの意見を踏まえ、「デジタルガバナンス・コード3.0~DX経営による企業価値向上に向けて~」が策定され、2024年9月19日に公表されました。以下に、抜粋してご紹介します。
■主な改訂のポイント
•今回はより経営者がDXに取り組むことを推進するため、DX推進による企業価値向上に焦点を当てた改訂を実施。
<名称>
•デジタルガバナンス・コードの目的である「DX経営による企業価値向上」を強調する副題を新たに記載
<序文>
•DXの推進による企業価値向上に焦点を当てた経営者向けのメッセージを追加するなど、序文を大幅に見直し
•「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」の3つの視点と整合する、「DX経営に求められる3つの視点」を追加し、デジタルガバナンス・コードの全体像を「DX経営に求められる3つの視点・5つの柱」と新たに整理
<本文>
•経営者への伝わりやすさを重視し、柱立ての名称・構成を大幅に見直し
•デジタルガバナンス・コード2.0において「取組例」として設けていた内容を「望ましい方向性」に統合し、より簡潔で分かりやすい内容に変更
•データが企業の成長に欠かせない要素になってきていることを踏まえ、経営におけるデータ活用やデータ連携の重要性を強調
•DXを推進していく上で最大の課題であるデジタル人材の育成・確保について、デジタルスキル標準を参照した社員のスキル可視化や経営者を含めた役員・管理職の意識改革、キャリア形成支援等の重要性を強調
•サイバーセキュリティリスクについて、第三者監査やサプライチェーン保護に向けた対策等の重要性を強調
•その他、取締役会の役割等、各項目において必要な見直しを実施
DXの推進による企業価値向上について
⚫我が国や諸外国において、データ活用やデジタル技術の進化(生成AI技術の急速な進展等)、グローバル化による産業構造の変化が起きている中、企業規模や業種・業界にかかわらず、全ての企業が、データとデジタル技術を活用した経営変革の取組であるDX(デジタルトランスフォーメーション※1)に取り組むことで、価値創造経営を実現することができる。
⚫一方で、これらの変化を捉えてDXを推進している企業とそうでない企業との差は開き、また、経営者自らの意思でDXに取り組み、飛躍した企業と、周囲からの要請によりDXに取り組んだものの、結果が出ない企業との差も大きくなっている。
⚫DXの推進は、次に述べるようなメリットが得られる重要な取組であることを理解した上で、全ての企業は、主体的にDXに取り組み、企業価値の向上につなげる必要がある。
・データとデジタル技術を活用して、既存ビジネスモデルの深化や業務変革・新規ビジネスモデルの創出を行うことで、顧客提供価値や収益等が向上する。
・DXを推進していく中で、企業は、生産性や従業員エンゲージメントの向上、創造性人材の育成等の恩恵を享受し、結果的に優秀な人材を獲得でき、人的資本経営の実現にもつながる。
・DXを推進していく上での前提となるサイバーセキュリティ対策を必要不可欠な投資であると捉え、サイバーセキュリティリスクを把握・評価し、対策を実施することで、企業活動におけるコストや損失を最小化できる。
・また、個社のDXを超えて、国境・産業・組織等をまたぐデータ連携を行うことで、さらに付加価値を高めることができる。その際、法令等に従い適切なデータの保護措置等を実施し、データを管理・活用すること(データガバナンス)で、取引先等からの信頼性が向上する。
⚫実際、優れたDXの成果を出しているデジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)選定企業の株価は、日経平均株価よりも伸長しており、市場でも評価されている。
※1:DXの定義は次のとおりとする。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
⚫こうしたDX推進による企業価値向上の恩恵を享受するためには、企業が定める、データとデジタル技術を活用する戦略(DX戦略)を、人材戦略と同様に企業全体の組織構造や文化の改革、中長期的な投資を行う観点から、経営ビジョンの実現に向けた戦略そのものと捉える必要がある。
⚫そのためには、経営者が積極的に関与することが極めて重要であり、経営者は「DXに投じる資金はコストではなく、価値創造に向けた投資である」、「DX推進はIT部門ではなく、経営陣(経営者や執行役員等)や取締役会の役割である」と考え、「自社のDX戦略について、社内外のステークホルダーと積極的な対話を行う」ことが求められる。
⚫具体的に企業がDXの推進により持続的な企業価値の向上を図っていくためには、以下の4点が重要である。
①新たな価値創造のために不可欠な経営資源としてデジタル技術を捉え、DX戦略を描くこと
②デジタルの力を、効率化・省力化を目指したITによる既存ビジネスの改善にとどまらず、新たな収益につながる既存ビジネスの付加価値向上や新規デジタルビジネスの創出に振り向けること
③ビジネスの持続性確保のため、ITシステムが技術的負債となることを防ぎ、計画的なパフォーマンス向上を図ること
④必要な変革を行うため、IT部門、DX部門、事業部門、経営企画部門などが組織横断的に取り組むこと
⚫こうした点を踏まえ、企業はデジタルガバナンス・コードに沿った経営(DX経営)を進めることにより、企業価値向上を実現することができる。
DXとSX/GXの関係性
近年その重要性が指摘されているSX(※1)やGX(※2)については、これらをさらに効果的かつ迅速に推進していくために、DXと一体的に取り組んでいくことが望まれる。
(※1)SX
企業が持続的に成長原資を生み出し、企業価値を高めるべく(「企業のサステナビリティ」の向上)、社会のサステナビリティ課題に由来する中長期的なリスクや事業機会を踏まえ(「社会のサステナビリティ」との同期化)、資本効率性を意識した経営・事業変革を投資家等との間の建設的な対話を通じて実行すること
(※2)GX
産業革命以来の、化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換すること
デジタルガバナンス・コードについて
⚫経営者が企業価値を向上させるために実践すべき事柄を取りまとめたものが「デジタルガバナンス・コード」である(全体像は以下の「DX経営に求められる3つの視点・5つの柱」の図を参照)。
⚫対象は、上場・非上場や、大企業・中小企業といった企業規模、法人・個人事業主を問わず広く一般の事業者とするが、例えば、本書の実践すべき事柄を基に投資家をはじめとしたステークホルダーと対話する、これから取り組む上での実践すべき事柄として本書を参考にするなど、各々の事業者の状況に応じて本書を活用されたい。
⚫なお、「ステークホルダー」という用語は、顧客、投資家、金融機関、社員、取引先、システム・データ連携による価値協創のパートナー、地域社会等を含む。
⚫特にデジタルガバナンス・コードの各柱は、(1)基本的事項(①柱となる考え方及び②認定基準)と(2)望ましい方向性の2つの区分で構成される。
⚫(1)基本的事項における①柱となる考え方と②認定基準は、それぞれ情報処理促進法に基づく指針と施行規則の内容を根拠に策定しており、企業がデジタルによって自らのビジネスを変革するためのビジョン・戦略・体制等が整った事業者として認定する「DX認定制度」の基準となっている。
⚫また、(2)望ましい方向性は、DXの優良事例を選定し、広く波及させ、経営者の意識改革を促す「DX銘柄」や「DXセレクション」の評価・選定基準としても活用されるものである。
DX経営に求められる3つの視点
⚫経営者が、企業価値の向上につながるDX経営を実行するに当たっては、以下の3つの視点を意識しながら、各柱立ての項目について取り組むことが重要である。
⚫なお、3つの視点と5つの柱との関連性については、「DX経営に求められる3つの視点・5つの柱」の図を参照されたい。
①経営ビジョンとDX戦略の連動
・経営環境が急速に変化する中で、持続的に企業価値を向上させるためには、経営ビジョンと表裏一体で、その実現を支えるDX戦略を策定し、実行することが不可欠である。
・DX戦略の検討に当たっては、経営陣が主導し、経営ビジョンとのつながりを意識しながら、重要なデジタル面の課題について、具体的なアクションやKPIを考えることが求められる。
②Asis-Tobeギャップの定量把握・見直し
・経営ビジョン実現の障害となるデジタル面の課題を特定した上で、課題ごとにKPIを用いて、目指すべき姿(Tobe)と現在の姿(Asis)とのギャップの把握を定量的に行う必要がある。
・把握した結果を基に、DX戦略が経営ビジョンと連動しているかを判断し、DX戦略を不断に見直していくことが重要である。
③企業文化への定着
・持続的な企業価値の向上につながる企業文化は、所与のものではなく、DX戦略の実行を通じて変革し、醸成されるものである。そのため、DX戦略を策定する段階から、目指す企業文化を見据えることが重要である。
詳しくは、こちらをご覧ください。
参照ホームページ[経済産業省]
https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240919001/20240919001.html