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2024.10.01

【経営】「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更を閣議決定

厚生労働省では、昨年11月から今年6月にかけて4回にわたり「過労死等防止対策推進協議会」を開催し、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下、「大綱」という。)の見直し案をまとめました。大綱の変更が、閣議決定されたとのお知らせがありました。

大綱は、「過労死等防止対策推進法」(平成26年法律第100号)に基づき、おおむね今後3年間における取組について定めるものであり、令和3年に続き、3回目の変更になります。

厚生労働省は、この新たな大綱に基づき、関係省庁等と連携しながら、過労死ゼロを目指し、国民が健康に働き続けることのできる充実した社会の実現に向けて、さまざまな対策に引き続き取り組んでいくとのことです。

【新たな大綱に定めた過労死等防止対策の主な取組等】

1.令和7年に大綱策定から10年の節目を迎えるため、この間の調査研究や取組の成果を振り返り、それらも踏まえ今後の対策を更に検討し推進

2.令和6年4月から全面適用された時間外労働の上限規制の遵守を徹底、過労死等を繰り返し発生させた企業に改善計画を策定させるなど再発防止の指導を強化

  フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行後の履行確保、個人事業者等の安全衛生対策・健康管理の強化、労災保険の特別加入制度の対象拡大等の取組を推進

3.芸術・芸能分野を重点業種等※に追加、事業主に義務付けられているハラスメント防止措置の状況についても過労死等事案から収集・分析を実施

  ※自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療、建設業、メディア業界

4.事業主は、管理職や上司、若年労働者に対する労働関係法令の研修等を実施、労働組合は、職場で労働関係法令が適切に運用されているか定期的に確認するなど、国以外も含めた関係者による取組を推進

「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更案のポイント

■現状と課題

○平成26年6月に過労死等防止対策推進法が成立して以降、働き方改革関連法に基づく働き方改革等の取組が進められてきた。その結果、長時間労働の雇用者割合は減少し、年次有給休暇の取得率は増加するなど一定の成果がみられ、令和6年4月からは、建設、自動車運転、医師等にも時間外労働の上限規制が適用されるなど、過労死等防止の機運も高まってきている。

○一方、過労死等事案による労災請求・支給決定件数は増加傾向にあり、長時間労働対策に加え、メンタルヘルス対策やハラスメント防止対策の重要性が一層増している。

○また、働き方の多様化が進む中、フリーランス等の就労実態や健康確保、ハラスメントの状況等にも目を向ける必要がある。

■変更のポイント

1:大綱策定10年を振り返り、更なる取組を推進3業種やハラスメントに着目した調査・分析

・令和7年には大綱策定から10年の節目を迎えるため、この間の調査研究や取組の成果を振り返り、それらも踏まえ今後の対策を更に検討し推進

2:上限規制の遵守徹底、過労死等の再発防止指導、フリーランス等対策を強化

・令和6年4月から全面適用された時間外労働の上限規制の遵守を徹底、過労死等を繰り返し発生させた企業に改善計画を策定させるなど再発防止の指導を強化

・フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行後の履行確保、個人事業者等の安全衛生対策・健康管理の強化、労災保険の特別加入制度の対象拡大等の取組を推進

3:業種やハラスメントに着目した調査・分析を充実

・芸術・芸能分野を重点業種等に追加

・過労死等事案について、事業主に義務付けられているハラスメント防止措置の状況についても収集・分析を実施

4:国以外も含めた関係者による取組を推進

・業種別のカスタマーハラスメント対策の取組を支援

・事業主は、管理職や上司、若年労働者に対し、労働関係法令の研修等を実施

・労働組合は、職場で労働関係法令が適切に運用されているか定期的に確認

【ポイント1:大綱策定10年を振り返り、更なる取組を推進】

・平成26年6月過労死等防止対策推進法が成立、同年11月施行

・平成27年7月「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が閣議決定(平成30年7月及び令和3年7月に変更)

【主な制度改正】

●平成30年6月:働き方改革関連法が成立

・時間外労働の上限規制(令和6年4月全面施行)、年5日の年次有給休暇の時季指定義務、勤務間インターバル制度の導入の努力義務等

・令和3年9月:脳・心臓疾患の労災認定基準改正

・令和5年9月:精神障害の労災認定基準改正

【調査研究】

●平成26年11月過労死等防止調査研究センターが設置

●過労死等事案の分析結果、労働・社会分野からみた過労死等の調査・分析結果等について、毎年の過労死等防止対策白書で公表

【周知啓発】

●11月の過労死等防止啓発月間に、全国47都道府県で過労死等防止対策推進シンポジウムを開催

●中学・高校等において、過労死された方の遺族等を講師として「働くことについて考える授業」を実施

●令和7年7月最初の大綱策定から10年の節目

●10年間の取組の成果等を振り返り、今後の対策を更に検討し推進

【ポイント2:上限規制の遵守徹底、過労死等の再発防止指導、フリーランス等対策を強化】

①時間外労働の上限規制の遵守徹底等

・令和6年4月から、工作物の建設の事業、自動車運転の業務、医業に従事する医師等にも時間外労働の上限規制が適用されたことから、その遵守徹底を図るとともに、商慣行・勤務環境等を踏まえた取組を推進する。

商慣行・勤務環境等を踏まえた取組の推進

【トラック運送業】

・緊急増員したトラックGメンによる是正指導の大幅強化や「標準的運賃」の8%引き上げ改定により、取引環境の適正化に向けた取組を推進する。

・令和6年4月に、構造的な対策として、物流効率化や賃上げ原資確保のための適正な運賃導入を進める法律が成立したことを受け、同法の施行に向けて政省令等の整備を進める。

【医療従事者】

・医療機関の取組事例の周知や医療勤務環境改善マネジメントシステムの普及促進、都道府県医療勤務環境改善支援センター等による支援及び支援力強化等を進める。

・看護師に対するハラスメントを防止するとともに、夜勤負担を軽減し、働きやすい職場づくりを進める。

【建設業】

・令和6年通常国会に、処遇改善に向けた賃金原資の確保と下請事業者までの行き渡り、資材価格転嫁の円滑化による労務費へのしわ寄せ防止、更には、働き方改革や現場の生産性向上を図ることを内容とする法律が成立したことを受け、それに基づく取組を推進する。

【教職員】

・公立学校における働き方改革の更なる加速化、教師の処遇改善、公立学校の指導・運営体制の充実、教師の育成支援を一体的に進める。

・各教育委員会における公立学校の業務の適正化を図る取組の推進や、勤務時間管理の徹底、ストレスチェックの実施等の労働安全衛生管理を一層充実するとともに、予防的取組や相談体制の充実、復職支援等のメンタルヘルス対策、ハラスメント対策等を推進する。

【情報通信業】

・IT業界の働き方・休み方の推進に関するサイトにおいて、対応策や事例集等を周知し、職場環境の改善の促進を図る

②過労死等を発生させた企業に対する再発防止対策

・過労死等を発生させた事業場に対する従来の監督指導又は個別指導とともに、企業本社における全社的な再発防止対策の策定を求める指導を実施する。

・一定期間内に複数の過労死等を発生させた企業に対しては、企業の本社を管轄する都道府県労働局長から「過労死等の防止に向けた改善計画」の策定を求め、同計画に基づく取組を企業全体に定着させるための助言・指導(過労死等防止計画指導)を実施する。

③フリーランス等が安心して働ける環境の整備

・令和6年11月に施行される「フリーランス・事業者間取引適正化等法」の周知・広報及び法施行後の履行確保に取り組む。

・令和6年5月に策定した「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」に基づき、個人事業者等自身による健康管理や、個人事業者等が過度な長時間就業とならないよう注文者等による期日設定等に関する配慮等の取組を促進する。

・令和6年1月にフリーランスに対象を拡大した労災保険の特別加入制度により、安心して業務に従事できる環境整備を図る。

④勤務間インターバル制度の導入促進

・時間外労働が長い企業に対し、長時間労働の是正、年次有給休暇の取得促進とともに、勤務間インターバル制度の趣旨を説明し導入を促す。

・企業における取組を波及させることを念頭に、産業医等に対する勤務間インターバル制度の内容・効果の周知を図る。

・勤務間インターバル制度の導入の必要性を感じていない企業に対し、同制度の導入が労働者の健康の確保に資することに加え、人材確保にもつながるなどのメリットがあること等、同制度の意義を訴求するコンテンツを作成し周知を図る。

【ポイント3:業務やハラスメントに着目した調査・分析を充実】

①芸術・芸能分野を重点業種等に追加

・過労死等が多く発生している又は長時間労働等の実態があるとの指摘がある職種・業種(重点業種等)に、芸術・芸能分野を追加し、過労死等事案の分析や労働・社会分野の調査・分析を実施する。

※これまでの重点業種等:自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療、建設業、メディア業界

②働き方や就労環境、属性等に焦点を当てた調査の実施

・重点業種等に加え、フリーランス、高年齢労働者、労働時間把握が自己申告制である労働者など、働き方や就労環境、属性等に焦点を当てた調査を行う。

・工作物の建設の事業、自動車運転の業務、医業に従事する医師等に関して、時間外労働の上限規制を遵守するための労働時間制度の運用状況、労働の実態、商慣行の変化も把握可能な調査を行う。

③ハラスメントに関する調査・分析

・過労死等事案について、事業主に義務付けられているハラスメント防止措置の状況についても収集・分析を実施する。

・カスタマーハラスメントによる心理的負荷に関する調査を行う。

④過労死等の予防研究と支援ツール開発の一体的実施

・過労死等のリスク要因とそれぞれの疾患、健康影響との関連性の解明、効果的な予防対策に資する予防研究と、事業場の規模にも着目した過労死等防止対策の定着を支援するツールの開発と効果検証等を一体的に実施する。

⑤調査・分析結果の発信

・調査研究の成果やその他の過労死等に関する国内外の最新情報について、専用ポータルサイト「健康な働き方に向けて」を通じて公表するとともに、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」においても、同専用ポータルサイトの情報を掲載し、情報発信を行う。

【ポイント4:国以外も含めた関係者による取組を推進】

①メンタルヘルス対策

・中小企業におけるストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策の推進のため、事業主団体等を通じて、メンタルヘルス対策等の産業保健活動に要する費用を助成する助成金の活用を促進する。

②職場のハラスメントの防止・解決

・カスタマーハラスメントについて、「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」を踏まえ、企業の対策事例等の周知とともに、業種別のカスタマーハラスメント対策の取組支援を行う。

・職場におけるハラスメント対策として、ポータルサイト「あかるい職場応援団」において、事業主等向けのハラスメント対策研修動画等のコンテンツを公開するなど周知・啓発を図る。

③公務員に対する取組

・国家公務員について、令和6年4月から適用された勤務間のインターバル確保に係る努力義務規定に基づき取組を推進する。

・各府省におけるテレワークの適正かつ公平な運用の確保を図るため、令和6年3月に策定した「国家公務員におけるテレワークの適切な実施の推進のためのガイドライン」の周知徹底を行う。

・地方公務員について、国家公務員を参考に、勤務間のインターバル確保に向けた取組を推進するよう、総務省から地方公共団体に対して助言する。

④相談体制の整備等

・都道府県労働局において、過労死等に結び付きかねない職場におけるハラスメントやカスタマーハラスメントについて、労働者等からの相談への迅速な対応を行う。

・働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」の中で、メンタルヘルス等の相談窓口について、令和5年度から相談の対象者を労災保険の特別加入者に拡大しており、労災保険の特別加入者を含めた働く方への相談対応を行う。

⑤周知・啓発

・過労死等の現状やその防止に向けた取組状況について、国際社会に向けても積極的に発信する。

・過労死の遺族等を講師として学校に派遣する啓発授業について、受講する学校数や生徒数が増加するよう努める。

⑥過労死の遺児等の支援

・遺児の健全な成長をサポートするために必要な相談対応を行うとともに、遺児が随時相談できる環境を整える。

・遺児のニーズを踏まえ必要な対応を検討する。

⑦事業主等の取組

・事業主団体・経済団体は、会員企業等に対し過労死等防止のための必要な支援や情報提供に努める。

・労働者に対する労働関係法令の周知やハラスメント防止対策は事業主の責務であることを踏まえ、管理職等の上司や若年労働者自身に対する労働関係法令に関する研修等を通じて、過労死等やハラスメントの未然防止に努める。

⑧労働組合等の取組

・相談体制の整備や組合員に対し労働関係法令の周知・啓発を行う。

・労働時間の過少申告を行っていないか等を含め労働関係法令が適切に運用されているか定期的に確認する。

⑨国民の取組

・睡眠状況を始めとした生活スタイルを見直すなど、主体的に過労死等の防止のための対策に取り組むよう努める。

・発注者や消費者の立場として、働く方の長時間労働やメンタルヘルス不調等による過労死等を防止することについて理解と協力に努める。

数値目標

○過労死をゼロとすることを目指し、労働時間、勤務間インターバル制度、年次有給休暇及びメンタルヘルス対策について、数値目標を設定する。

○公務員についても、目標の趣旨を踏まえ、各職種の勤務実態に応じた実効ある取組を推進する。

詳しくは、こちらをご覧ください。

参照ホームページ[厚生労働省]

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_41932.html

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